令和3年10月定例会。内田市長に産業・農林水産業・観光振興について質問を!

10月25日午前11時10分より、10月定例会一般質問の2番目で、登壇いたしました。その内容について掲載いたします。

 

おはようございます。5番志帥会の西山一美です。

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 質問に入る前に、9月5日に執行されましたいわき市長選挙で、15代目のいわき市長に就任されました内田ひろゆき市長に、心からお祝いを申し上げます。 

 内田市長は、剣道四段と聞いております。私は、高専の授業で2年間剣道を教わりました。短い期間ではありましたが、先生から教えていただいた言葉がありました。剣道を極めていく中で大切な、「三つの先(せん)」という考えの中の一つ「先の先」という言葉です。「先の先」とは、最も心がけなくてはならない打突の機会であり、相手がどう対応するかの迷いを察知し、防御に転じるその前に打ち込むことで、「先の先」に長けた剣士には敵わないと言われているそうです。 

 この言葉は、市政の運営、特に「いのちを守る」危機管理の心構えにも通じるものだと思います。内田市長には、深く理解しておられる「先の先」の心構えを存分に発揮して、公約の実現を目指して頑張っていただきたいと思います。

 それでは、通告順に従いまして質問をいたします。

 

1.産業振興政策について 

 大きな質問の1番目は、「産業振興政策について」です。

 現在、本県浜通り地域において、新産業の創出や産業の国際競争力の強化をテーマに研究開発拠点を整備する「福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想が進められています。この取組みは、2011年に発生した東日本大震災及び原子力災害によって失われた浜通り地域等の産業を回復するために、新たな産業基盤の構築を目指す国家プロジェクトです。イノベーション・コースト構想は、災害対応のロボットやドローンなどを研究する「福島ロボットテストフィールド」の設置をはじめとした事業が展開されており、本県の産業復興さらに産業振興に向け、着実に進んでいます。復興庁は、次の10年を第二期復興創生期間として、浜通り地域に「創造的復興の中核拠点」の設置計画を公表しました。それが「国際教育研究拠点」構想であり、イノベーション・コースト構想を進めていく中において、大きな意義のある国家プロジェクトです。

 本市の産業振興を進めていくうえでも欠かすことのできない「国際教育研究拠点」の誘致または連携に向けて、市長を先頭にしっかりと対応を進めなければならないと思っています。そこで、本構想への取組みをはじめとして、市長が掲げる「先端産業で人材の還流を図る」ための産業振興政策について、質問をいたします。

 (1)1点目は、「国際教育研究拠点への取組みについて」です。

 2014年の9月定例会において、私は、「イノベーション・コースト構想」について、本市がどのようにかかわっていくのか質問をいたしました。その答弁のなかで、相双地域に隣接し、首都圏にも近い地理的特性、そして既存の産業集積を生かした新たな産業創出や復興関係者の研究・居住空間を提供する「ゲートウェイ」の役割を担うことなどについてしっかりと主張していくという市の考えを聞きました。

 構想が着実に進んでいく中、本市がさらに連携を図っていくためには、あらためて現在の状況について、把握し分析することが大変重要と考えますことから、1つとして、福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想への取組みの現況はどのようなものか伺います。

【答弁】総合政策部長 福島イノベーション・コースト構想に基づきながら、本市の産業の振興・集積に向けて様々な取り組みが進められておりますが、その主なものを申し上げますと、まず、常磐共同火力勿来発電所における高効率の石炭ガス化複合発電、いわゆるIGCCが整備・稼働していることや、風力発電に代表されるエネルギー産業の集積が進められていることのほか、地域復興実用化開発等促進事業により、地元企業の研究開発支援の取組みが促進されていることなどが挙げられます。

 さらには、風力産業を浜通りの基幹産業へ発展させるための人材の育成に向け、東京大学先端科学技術研究センターと連携しているほか、福島工業高等専門学校におきましては、長期間にわたる廃炉を担う人材を育成するための高度な教育プログラムが実施されるなど、様々な取組みが展開されているところであります。

 これから動き出す「国際教育研究拠点」は、主な研究分野として、ロボット分野、 農林水産業分野、エネルギー分野、放射線科学分野、原子力災害に関するデータや知見の集積・発信を想定し、令和3年秋までには、国立研究開発法人を軸に関係省庁会議内で検討を進め、令和3年度内には基本構想を策定することとされています。さらに、この基本構想を踏まえて、令和4年度以降、新拠点の具体的な設計や建設運営等を順次実施するとのことですので、本市も、この動きにしっかり連動して活動を進めていかなければならないと思います。そこで2つとして、本市は、国際教育研究拠点の誘致に対する取組みを、どのように行っていくのか伺います。

【答弁】総合政策部長 国際教育研究拠点につきましては、令和2年12月の国の復興推進会議において、「避難指示が出ていた地域への立地を基本として選定する」ものとして整理がなされています。現在、国が拠点の基本構想を今年度内に策定することとしておりますが、拠点がその機能を十分に発揮し、浜通り地域全体の振興発展に寄与するためには、地元企業の参画や、担い手となる地域人材の育成が不可欠であると認識しております。このようなことから、市といたしましては、これまでも、本市の多様な産業基盤や交通アクセスなどの都市基盤のほか、福島工業高等専門学校をはじめとした高等教育機関など、本市の有する様々な既存の地域資源を、拠点がしっかりと活用していく枠組みを構築するよう国や県に対し、様々な機会を捉えて申し上げてまいりました。引き続き、こうした本市の強みと拠点との連携が確かなものとなるよう、国や県に対し、本市の考えをしっかりと伝えてまいりたいと考えております。

 これから着実に取組みを行っていくには、基本構想に掲げる研究分野がかなり多く、拠点設置自治体だけでは活動が制限されてしまう恐れもありますので、県や相双地域自治体との連携が欠かせないと考えます。3つとして、国際教育研究拠点整備に向け、県及び相双地域自治体と、どのように連携していくのか伺います。

【答弁】総合政策部長 国際教育研究拠点は、浜通り全体の復興を成し遂げるための象徴となるものであり、面的な学術拠点として、地域の一体感の創出につながるよう、整備されることが望ましいものと考えております。このようなことから、近隣の相双地区の自治体や、広域連携を調整する福島県との連携は欠かすことができないものと考えており、国との協議の場等における意見交換等を重ねながら、整備主体である国に対し、ともに浜通り地域発展を目指していくパートナーとして、我々の考えをしっかりと伝えていくことが必要であると考えております。

 関連自治体としっかり連携してほしいと思います。4つとして、拠点整備の実現による本市への波及効果は、どのようなものと考えているのか伺います。

【答弁】市長    国際教育研究拠点の方向性や、本市の有する産業基盤等のポテンシャルを勘案しますと、本市への経済波及効果といたしましては、次のことが考えられます。1つには、若者の雇用や学術教育研究の場が創出されることにより、本市への人材還流が促進されること。2つには、首都圏、さらには世界中から優秀な人材が集まることにより、高度人材の育成につながること。3つには、地域産業が先端的・国際的な研究と連携することにより、新たな産業の創出や既存産業の底上げにつながることなどが挙げられます。私は、これらの効果が最大限に発揮されるためには、本市が有する様々な強みと国際教育研究拠点とが、日ごろから密接につながっていくことが、大変重要であると考えております。国における基本構想の策定が最終局面を迎えておりますが、私が先頭に立って、国や県に対し、拠点に係る本市の考え方をしっかりと伝えるべく、積極的に行動してまいる所存でございます。

 本市の強みは、市内の既存施設等を利用して研究や居住環境などを提供することで、研究者を生活面でもサポートできることだと考えます。さらに、地理的特性や利便性なども踏まえますと、どのような形であっても、「国際教育研究拠点」整備への関わりは大変重要だと考えますので、本市の積極的な動きに期待して、次に移ります。

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 (2) 2点目は、「カーボンニュートラル社会への取組みについて」です。

 世界的にカーボンニュートラルに向けた動きが進む中、昨年10月、菅総理 は、2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを宣言しました。

 温室効果ガスゼロを2050年までに目指していくことは大変な困難を伴いますが、その難しい問題を前に進めていくためには、石炭などの化石燃料から排出される二酸化炭素を減らしていく技術開発と同時に、再生可能エネルギーへの速やかな移行を行いながら、地球に負荷のない社会づくりを進めて行くことが必要です。そこで、そのようなことを踏まえ、1つとして、カーボンニュートラル社会の実現に向けた市内産業界の現状はどのようなものか伺います。

【答弁】産業振興部長 市内産業界の現状につきましては、東日本大震災後に県が掲げた「再生可能エネルギー先駆けの地」の実現に向けて、いわきバッテリーバレー推進機構が、蓄電池や再生可能エネルギー、水素等を活用したエネルギーマネジメントシステムにより、エネルギー復興都市を目指す「新エネルギー社会実現構想」を取りまとめましたほか、水素等の次世代エネルギーを通じた新たな産業創出や関連産業におけるCO2削減の可能性についてアクションプランを含めた検討を行う「いわき水素エネルギー利活用研究会」をいわき商工会議所と市内企業が連携し立ち上げるなど、活発な活動が展開されております。市といたしましては、今般の国の2050年カーボンニュートラル宣言やグリーン成長戦略の策定といった同行は、本市産業界にとっての新たなビジネスチャンスに繋がる追い風であり、多くの市内企業の皆様がカーボンニュートラル社会の実現に向けた理解を深めていくことが重要であると認識しております。こうした認識のもと、地域理解の促進、さらには、関連する周辺産業の集積に結び付けられるよう、産業界の皆様と連携を密にしながら、取組みを進めてまいりたいと考えております。

  新聞報道によれば、国が掲げたこの急速な動きに、戸惑いを覚えている経営者も少なからずおり、工場や商業施設では温室効果ガスの排出抑制が求められることから、多額の費用負担を伴う課題となります。特に、中小企業には経営の重荷となる懸念があることから、市や関係機関が一体となり、企業を支援する取り組みが欠かせません。市や経済団体は業界ごとに求められる対応策や国からの支援制度などをきめ細かく、企業に周知しながら、カーボンニュートラルを目指す流れに沿って、態勢の強化を進めていく必要があると指摘しています。しっかりとした支援体制を整えながら、「カーボンニュートラル社会の実現」を目指してほしいと思います。

 小名浜港は、「カーボンニュートラルポート」を検討する港湾の一つとして選定されました。本年2月定例会の答弁によれば、小名浜港は、港湾の背後に素材系の臨海部産業が集積していることや、港湾を利用する火力発電所アンモニア混焼の可能性があること、さらには、貨物運搬車両用の燃料電池車への転換による脱炭素化の効果が見込まれることなどが主な選定要因とのことです。関係団体による検討会が定期的に開催されており、今後の動向が大変期待されます。そこで、2つとして、小名浜港におけるカーボンニュートラルポートの実現に向けた取組みの現況について伺います。

【答弁】産業振興部長 小名浜港におきましては、昨年12月に、カーボンニュートラルポートの形成を検討する港湾に選定されて以来、令和2年度には計3回の検討会が開催され、小名浜港における取組みの方向性として、石炭火力発電におけるアンモニアなどの需要に対応した大型船による大量一括輸送の受け入れ環境、また、トラックや荷役機械の燃料電池化などについて検討を進めていくことが示されたところであります。本年度につきましても、国、県、市及び関係事業者の参画により、引き続き検討会が開催されております。具体的には、火力発電におけるアンモニアの燃料利用や荷役・輸送に係る燃料電池化などについてワーキンググループを設置し、より詳細な検討を進めることとしており、今年度末には、カーボンニュートラルポートの将来像や形成に向けた今後の取組みが示される予定となっております。

 ひきつづき、事業の具現化に向け、市長が会長を務める小名浜港整備促進期成同盟会をはじめ、港湾関係団体の活動等を通して、官民一体となった取組みを積極的に進めてほしいと思います。

 次に、市長が提言している「ハイテク先進地づくり」についてですが、国と本市が一体で進めることで経済発展の起爆剤となり得るとのことであり、そのような観点から再生可能エネルギー100パーセント工業団地の誘致についても進めたいと述べております。すでに、浜通り地域に複数の施設を整備することが決まり、浪江町では「福島水素エネルギー研究フィールド」が設置されていますが、3つとして、本市は、再生可能エネルギー100%工業団地の誘致に向けた取組みをどのように進めていくのか伺います。

【答弁】産業振興部長 再生可能エネルギー100%工業団地、いわゆる「RE100工業団地」につきましては、本年2月に国が改定した「福島新エネ社会構想」におきまして、県が、関係府省庁・県内市町村と連携し、太陽光をはじめとした再生可能エネルギー発電、熱利用、蓄電池等との組み合わせによる工業団地の構築を目指すこととされております。「RE100工業団地」の整備に際しましては、用地の選定や整備に要する期間などの諸問題について認識しているところでありますが、一方、若者の市外流出を抑制するための雇用の場の確保をはじめ、「脱炭素社会」の実現に向けた先進的な取組みとして、本市のイメージアップなどの波及効果も期待されるものと考えております。市といたしましては、国・検討の動向を注視しながら、働きかけを進めてまいりたいと考えております。また、RE100工業団地の誘致のみならず、産業部門において「脱炭素社会」の実現を目指す観点からは、本市に立地する全ての事業者の参画が重要であると認識しておりますことから、まずは、事業者に対する脱炭素社会の実現に向けた意識啓発を図る取組みなどを積極的に進めてまいりたいと考えております。

 本市も、次世代エネルギーを活用し、温室効果ガスの排出削減を進めながら、将来にわたって地域産業を支えていくために、必要となる国等からの支援については、しっかりと要望活動等を通じて求めるとともに、福島県における水素社会実現に向けた実証地域モデル形成の適地として、エネルギー拠点形成や資源エネルギー産業等の立地促進・企業誘致などにも、内田市長を先頭にあらためて力を注いでいただくことを要望いたします。

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 次に、(3) 3点目は、「機会を捉えた産業振興政策について」です。

 東日本大震災とそれに伴う原子力災害の発災後、再生可能エルネギーの有効利用を目的として、県は、浜通り地域に風力発電施設を数多く整備して、原子力に代わるエネルギーの導入を進めるとともに、地域の雇用が確保されることで、「福島イノベーション・コースト構想」や「福島新エネ社会構想」などのプロジェクトをさらに推し進めています。
 特に、風力関連産業は今後、ますます需要の高まる可能性を秘めた将来性のある分野であり、すでに国内において中核の風力発電メンテナンス企業が本市に進出し、地元事業者の風力関連産業への参入も進んでいます。そこで、風力発電産業の動向について質問いたします。1つとして、市内における風力発電産業に対するこれまでの取組み状況について伺います。

【答弁】産業振興部長 風力発電にかかわる産業には、建設工事やメンテナンス業務など、幅広い業種への経済波及効果が見込まれますことから、これまで、建設工事に関連しまして、大手建設事業者から地元企業が受注できるよう、令和元年の7月に、いわき商工会議所と市内建設業の関係団体が中心となり、研究会を立ち上げ、風力発電事業に関する知識の習得や現場の視察等を行ってきたところであります。また、メンテナンス業務に関連しまして、国内大手の風力メンテナンス企業である株式会社北拓を四倉中核工業団地へ誘致いたしましたとともに、風力発電に関する幅広い知見を有する東京大学先端科学技術研究センターと連携協定を締結し、地元企業の参入促進を図るべく、風力産業界に必要となる産業人材の育成にも、取り組んでいるところであります。

  風力メンテナンス産業は、今後、本県浜通り地域を中心に陸上風車の大量導入が予定され、さらには、既存風車の経年劣化が進んでいることに合わせ、風車の定期的な安全管理検査が義務化されたことなどから、メンテナンスに必要な人材確保や国内における部品供給体制の構築、そして新たなメンテナンス技術の開発が求められています。そこで2つとして、今後の風力発電産業に関する取組みはどのようなものか伺います。

【答弁】産業振興部長 今後、風力発電産業を根付かせて行くためには、建設工事やメンテナンス業務など、風力発電所運営に関する様々な業務を、地域企業が積極的に受注していくことが重要であり、その実現に向けては、市内企業自らが風力発電事業に関する新たな知識や技術を習得し、企業付加価値を高め、競争力強化を図って行くことが必要不可欠であると認識しております。このため、これまで取り組んできた風力発電にかかわる知識を習得するための市内企業向けのセミナー等の開催に加え、引き続き、東京大学先端科学技術研究センターと緊密な連携を図るとともに、本年10月に操業を開始した株式会社北拓の福島支店が有するメンテナンス部品の倉庫やトレーニング施設等の設備を活用することにより、研究開発事例の創出や風力メンテナンス人材の育成を進め、市内企業が風力発電産業に関わりやすい環境を整えていけるよう取り組んでまいりたいと考えております。 

 本市として、メンテナンス人材の育成、市内企業の技術力強化、産学官連携による実証研究などを一体的に推進できるメンテナンス拠点を形成し、風力関連産業の集積につなげていくため、さらなる関連企業の誘致や関係事業者との連携強化を進めなければなりません。また、カーボンニュートラル社会の実現に対応した市内企業の動向にも広く注視をしていかなければならないと考えます。そのような中、市長は「成長産業を創る」というキーワードのもと、様々な提案をしております。そこで、3つとして、「成長産業を創る」という公約の実現に向けてどのように取り組んでいくのか市長の考えを伺います。

【答弁】産業振興部長 本市の産業を取り巻く環境といたしましては、これまで答弁申し上げてきましたカーボンニュートラル社会の実現という流れに加え、福島復興やポストコロナ、人口減少の影響など、様々な社会情勢の変化に大きな影響を受けるものと認識しており、こうした社会情勢の中においても、本市産業界が的確かつ柔軟に適応し、稼ぐ力の向上と産業の新陳代謝を繰り返し、多くのビジネスチャンスを獲得していくことが重要であると認識しております。こうした認識の下、稼ぐ力の向上に向けまして、これまで取り組んできた風力発電産業化に向けた取組みをさらに推進するとともに、社会情勢に適応するための業態転換を促進するなど、外的要因による誘発や内発的成長の促進に取り組んでまいりたいと考えております。さらには、産業の新陳代謝として、地域産業の経営改善や事業継承を支援しながら、既存産業を適切に守り育てるとともに、創業や新規出店支援など新たなチャレンジに対する支援を行うなど、成長の段階に応じた支援を実施してまいりたいと考えております。こうした取り組みを複合的に進め、市民所得の向上に努めてまいりたいと考えております。

 成長産業を創るべき人材の育成や、市内の高校生や大学生など若者が市内で活躍できる雇用体制の強化をどのように前に進めていくのかも、大変重要な課題だと考えますことから質問をいたします。

 (4) 4点目は、「いわきの産業界で活躍できる雇用の促進について」です。

 本市は、以前から高校を卒業すると進学や就職のために、首都圏や仙台方面などに出てしまう傾向がありました。大学進学が目的の人もいれば、工業系をはじめ商業や実業系の企業に就職を希望する人などもおります。私たちの頃は、クラスの約8割が市外・県外を目指し、市内に残る学生は、2割程度だったと記憶しています。

 これから本市において、さらなる産業振興を進めるためには、産業界をけん引する若手技術者がしっかりと市内で就職し、首都圏並みの賃金体系で生活できることが求められます。企業誘致や市内企業の人材確保のために、市や経済団体等が一体となった雇用環境のさらなる充実のための取組みが必要と考えます。そこで、現在の状況について把握することが重要だと考えますことから、1つとして、産業振興の基礎となる技術系や実業系学生の市内雇用の取組みについて現況を伺います。

【答弁】産業振興部長 技術系や実業系学生を含めた高校生向け就職支援事業といたしまして、学生が実際に市内企業の製造現場などを訪問する「職体験ツアー」や市内で活躍する先輩社員等を講師に、仕事に対するイメージややりがいなど、より具体的な仕事に対する興味を促進する機会となる「職業講話」、早期からの職業意識の醸成や地元企業の理解促進を図る「地元企業説明会」などを実施するほか、就職先が決定していない学生を対象に「就職面接会」をハローワークいわきと共催で実施し、高校生の早期就職に向けて支援をしております。また、企業向けの支援事業としては、新規高等学校卒業者を多数雇用し、かつ職場定着が良好な企業に対し、「雇用優良企業」として感謝状を贈呈するほか、企業や経済団体等に対して、求人票の早期提出並びに労働環境の改善など魅力ある職場づくりを推進していただくよう、国・県と連携した要請行動を実施するなど、若者の地元定着に向けた企業の環境整備にも取り組んでいるところであります。

 本市は、新卒者などの地元定着を図るため、早い時期から地元企業就職のための各種支援事業を実施し、地元企業合同説明会なども開催しているとのことですが、今後、本市の若者が市内企業等に就職し、安心して長く働けるような雇用環境の整備は、喫緊の課題だと考えます。そこで2つとして、市長の雇用支援に対する考えはどのようなものか伺います。

【答弁】市長 人口減少や少子高齢化、さらには、若者の流出が顕著となっており、労働力の減少が喫緊の課題となっております。このことから、地域産業を支える人材の確保と育成に取り組む必要があるものと認識しております。また、首都圏等で学び、専門性を身に着けた方々が、本市に戻り、その能力を発揮し、働いてもらえる受け皿となる雇用の場を創出していくことも重要であると考えております。

 雇用の支援については、人材の確保、人材の育成、受け皿となる雇用の場の創出が必要とのことでした。その中でも市長は、様々な課題を解決するベースとなるのが「人づくり」であると述べており、私も地域産業を支えるため、若者を中心とした人材育成は特に重要だと考えます。そこで3つとして、ウ.市内雇用のさらなる促進に向けた取組みをどのように進めていくのか伺います。

【答弁】産業振興部長 地域産業を支える人材の確保と育成、受け皿となる雇用の場の創出のうち、人材の育成につきましては、次世代を担う未来ある若者たちを対象とした将来人材と、技術習得を目的とする社会人を対象とした即戦力人材に分け、その育成に取り組んでおります。具体的には、将来人材の育成については、小・中学生を対象に、生徒会サミットやいわき志塾、ELem(エリム) を活用した経済教育等の先進的なキャリア教育事業に取り組むとともに、福島高専や市内工業高校の学生などを対象に次世代自動車の基礎知識や製造技術等を習得するいわきEVアカデミーなどを開催しております。また、即戦力人材の育成については、市内企業の従業員などを対象に、風力メンテナンス分野等の技術力の向上、研究開発力の強化を目的とするいわきものづくり塾などを実施しているところです。今後におきましても、これらの取組みを強化しながら、併せて、育成した人材が定着できる魅力ある雇用の場の創出に取り組んでまいりたいと考えております。

 人材育成については、将来人材と即戦力人材の育成に取組んでおり、特に将来人材については、いわきEVアカデミーなど技術系の人材育成に努めているとのことでした。

 市内で活躍いただける人材と同様、首都圏をはじめ、市外で就職期を迎える大学生などに向けての市内雇用の促進に向けた施策も重要だと考えます。4つとして、市内出身学生に向けた就職のための還流支援の具体的な考えについて伺います。

【答弁】産業振興部長 市内出身学生が、大学卒業後などに、市内へ還流、いわゆるUターンすることを促すためには、大学生等と地元企業とのマッチングの場となる「合同企業説明会」などの雇用の機会創出に加え、進学等で本市を離れる前の郷土愛の醸成や本市を離れた首都圏等在住者との絆の維持など意識の醸成を図ることも重要であると考えております。まずは、郷土愛の醸成につきましては、産学官連携による人材育成組織いわきアカデミア推進協議会の事業の中で、高校生を対象とした「いわき発見ゼミ」を実施しており、市内企業の現場等を訪問・体験し、経営者や社員の方から仕事への情熱や人生体験、職業観や生き方を考える機会を提供しております。次に、首都圏等在住者との絆の維持につきましては、市内企業の若手社員と首都圏等在住の若者との交流や意見交換を行う「いわき若者会議」等を実施しております。

 それでは5つとして、市内還流を促すための周知については、どのように考えているのか伺います。

【答弁】産業振興部長 本市では、大学生等を対象とした「合同企業説明会」を毎年開催しております。この説明会は、一堂に集まった地元企業が、学生に自社の魅力を伝える場として活用されておりまして、市内還流を促す効果的な周知方法の一つとなっております。また、昨年度から、WEB会議システムを利用したことにより、企業説明動画の見逃し配信が可能となり、後日、いつでも、どこでも、誰とでも視聴ができる、新たな情報発信も取り組んでいるところであります。説明会に参加した学生の約9割から、「就職したいと思う企業があった」との回答が得られたことから、新型コロナウイルス感染症の影響下においても、本市の企業を知ってもらう良い機会を提供することができたものと考えております。今後におきましても、市内還流を促すための周知につきまして、SNS等の活用を含め、充実・強化に努めてまいりたいと考えております。

 大学生等への支援として、企業と学生が直接対面しなくてもやりとりが可能なWEB会議システムを利用した合同企業面接会を開催し、当日参加できなかった方には、後日視聴ができるよう、企業説明動画の見逃し配信を行ったとのことで、コロナ禍の中でのデジタル等を活用した就職情報の配信などは有効であり、また、SNS等の活用による周知も効果的だと考えます。引き続き、しっかりとマッチングができるよう様々な支援をお願いいたします。また、いわきをベースとして、自らの力で活躍する人材の育成や掘り起しも大変重要な施策だと考えます。そこで、6つとして、市内で起業を目指す人への支援策などについては、どのように考えているのか伺います。

【答弁】産業振興部長 市内で起業を目指す方への支援策につきましては、これまで、創業の意欲を高め、経営に必要な知識などを習得する講演会や創業セミナーを市内関係機関と連携しまして、開催してきたほか、創業者に対し事業に必要な資金の一部を融資する資金調達支援を行っております。また、いわき産業創造館内に、新たな事業を始める方や新しい事業展開を考えている方への支援を目的に、インキュベートルームを設置し、インキュベーションマネージャーによる事業化支援や相談、指導等を行ってきたところであります。加えて、副業や兼業など、多様な働き方への関心が高まりを見せていることから、本年10月には、いわき産業創造館内にシェアオフィスを開設し、副業者や創業者が働きやすい環境づくりを進めるなど、ソフトとハード両面の幅広い支援策を実施しているところであります

 近い将来、しっかりといわき市を支えてくれる産業人材の醸成についてのさらなる支援をお願いし、さらには、市長自らが掲げる様々な産業政策プランが関係団体や教育機関との連携のもとで、着実に前へと歩を進めていただけるよう要望して、次に移ります。

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2.稼げる農林水産業について 

 大きな2番目の質問は、「稼げる農林水産業について」であります。

 現在、農林水産業は、従事者の減少・高齢化、農地の減少・荒廃、漁獲量の減少、消費者である国内人口の減少が進んでいることに加え、近年の大規模自然災害の頻発など、取り巻く環境は厳しさを増しています。本市も、国内の状況と同じ傾向で、農林水産業に従事する皆さんの高齢化や収益の不確実性そして、事業の継承や担い手不足の問題など、様々な要因により継続意欲の減退から維持管理にも影響が及び、離職者も出ているという状況です。

 そこで、(1)1点目は、「本市の農林水産業振興に対する取組みについて」です。

 このような厳しい環境の中、これ以上離職者を出さないためにも、各種支援策を積極的に実施することによって「稼げる農林水産業」を作り出していくことが大変重要です。市長の掲げる振興プランをしっかりと具現化していくためにも、この取組みについて伺っていきたいと思います。まず、1つとして、国内における農林水産業の現状をどう考えているのか伺います。

【答弁】農林水産部長 我が国の農林水産業は、国民の生活に必要不可欠な食糧を供給する機能を担い、また、国土保全等の多面的機能も有する、国の基盤を支える重要な産業であると認識しております。現在、我が国の農林水産業は、担い手の著しい高齢化及び減少という課題に直面しており、今後も一層の担い手不足が懸念される中、近年頻発する大規模災害や新型コロナ感染症による社会への影響などの多様化するリスクに備えながら、持続可能な産業として成長していくことが重要であると認識しております。

 次に、農林水産業をそれぞれに、振興プランなどの内容について伺っていきます。2つとして、本市農業の現況をどのように捉えているのか伺います。

【答弁】農林水産部長 本市農業におきましても、我が国の農林水産業が抱える課題と同様に、農業者の高齢化及び担い手の減少が課題となっております。農林業センサスによりますと、農業者の平均年齢は平成12年の62.2歳から平成27年には68.1歳まで上昇しています。また、平成12年に10,594人であった農業就業人口は、減少傾向を続け、平成27年には、5,228人となっております。これらの高齢化及び担い手の減少に伴い、本市における耕作放棄地の面積は、平成12年の846haから平成27年には1,987haに増加しています。こうした本市農業の現況を改善していくためには、担い手の確保に努めるとともに、本市農業の持続可能性を高めていくことが重要であると認識しております。

 本市農業については、前回質問で伺った農業従事者の減少が大変大きな問題であり、農業就業人口は、ここ15年のうちに半数以下となり、認定農業者数についても、令和元年度からは減少傾向と、本市農業の将来に不安が残るような傾向を示しています。そこで、課題解決のために「いわき地域就農支援センター」の設置をはじめとした、いろいろな振興支援策がすでに展開されているとのことですが、3つとして、これからの本市農業のさらなる振興策をどのように打ち出していくのか伺います。

【答弁】農林水産部長 これからの本市農業のさらなる振興策としましては、農業次世代人材投資事業による収納直後の農業経営確立の支援や、担い手づくり総合支援事業による人・農地プランにおいて地域の中心的経営体に位置づけられた担い手に対する支援、今年度から設置した「いわき地域就農支援センター」における就農相談窓口のワンストップ化など、担い手の確保及び認定農業者の育成のための施策に引き続き取り組んでまいります。加えて、本市農業の持続可能性を高めていくため、生産性と収益性の高い農業経営の確立を支援するほか、農業生産基盤の保全・整備と防災・減災対策を推進してまいります。また、農業者の所得向上を支援するため、流通の実態や消費者の需要把握に努めるほか、農産物の高品質・高付加価値化を推進するなど、多角的な施策により取り組んでまいります。

 そのような中、9月上旬に、福島大学の三浦学長は、いわき市との連携を強化したいとコメントを発表しました。福島大学の学生や先生の農業などをはじめ様々な教育研究の拠点が本市を中心に整備されることを大変期待しています。そこで4つとして、農業振興に向けた福島大学学群食農学類との連携をどのように考えているのか伺います。

【答弁】農林水産部長 福島大学学群食農学類との連携につきましては、現在、令和3年度中の策定を予定しております本市農業行政の最上位計画に当たる次期市農業・農村振興基本計画の審議委員会のアドバイザーに就任いただき、様々な角度から本市農業振興に関する助言をいただいているところであり、今後も引き続き、策定後の当該計画に基づく施策推進のため連携強化を図ってまいりたいと考えております。また、福島大学とは、地域人材の育成や地域価値の向上、地域産業の振興に関することなどを連携・協力するため、令和2年10月に「国立大学法人福島大学いわき市の連携・協力に関する協定書」を締結していることから、本協定に基づき、現在国においても議論が重ねられており、福島大学が復興大臣に参画構想を提出している浜通りに整備予定の国際教育研究拠点の整備を見据え、本市農林水産業分野の課題抽出、研究テーマの形成、農学実践型教育プログラムとの連携について、意見交換等を進めてまいりたいと考えております。

 これから、福島大学との具体的な連携の方法と本市サポート体制の整備を進め、大学卒業後、本市の農林水産業をけん引する若手従事者を育てていくためにも、必ず実現してほしいと思います。

 次に、本市林業も、全国的傾向である木材価格の低迷や農業と同じように林業従事者の減少など、依然として厳しい状況にあります。そのようなことを踏まえながら本市は、各種支援策を進めていますが、5つとして、現在の本市林業の課題はどのようなものか伺います。

【答弁】農林水産部長 本市の林業の課題につきましては、戦後に植林した人工林が活用の時期を迎える中、原木価格の低迷や就業者の減少、高齢化などから森林所有者の施業意欲が減退している全国的な現状と同様であります。また、本市においては、市内の木材産業における素材生産分野、木材加工分野、建築分野のいわゆる川上、川中、川下の関係者間の連携強化による木材の安定供給や、地域材の需要創出などが必要であり、そのためには、林業就業者の確保・育成が課題であると考えております。

 近年の林業就業人口数の減少傾向を見れば、国や県と連携した大胆な支援策が必要であり、また地域特性なども考慮に入れた本市独自の支援も必要だと思いますが、6つとして、本市林業の振興策をどのように進めていくのか伺います。

【答弁】農林水産部長 本市林業の振興策につきましては、本年4月に施行しました「いわき市豊かな森づくり・木づかい条例」に基づき、市産木材の利用促進等に努めるとともに、森林の循環利用や多面的機能について市民の理解促進につながる動画の製作や、森林経営者管理制度の実施に向けたアンケート調査などの取組みを進めているところであります。また、市内の森林・林業・木材産業関係者や学識経験者から構成する「いわき市産木材利用推進会議」を今後も引き続き開催し、川上から川下までの連携強化を図りながら、官民一体となった施策の検討を行ってまいりたいと考えております。

 林業及び木材産業の持続的かつ健全な発展による本市経済の活性化、そして森林の有する多面的機能の持続的な発揮に寄与することを目的として「いわき市豊かな森づくり・木づかい条例」を制定しましたが、7つとして、市産木材の利用推進に対する取組みをどのように進めていくのか伺います。

【答弁】農林水産部長 市産木材の利用を推進するためには、公共建築物はもとより、民間住宅においても木造・木質化を促進する取組みが必要であると考えております。このことから、市の公共建築物等の整備に際し、計画の初期段階から、木造・木質化に係る概算工事費の算出、他の工法との比較等について、外部から助言を受け、その成果を基本設計等に反映させる「公共建築物木造・木質化専門アドバイザー事業」や民間住宅において、市産木材を一定量使用した住宅の建主や買主に対し、本市の優れた農林水産物や湯本温泉などの市内宿泊等、地域に限定した商品やサービスと交換可能なポイントを交付する「いわき市木づかい住宅ポイント事業」などを通して、市産木材の利用促進を図ってまいりたいと考えております。

 いろいろな施策を展開していることがわかりましたが、県や市そして林業関係団体などが一体となったさらなる支援体制づくりが必要と考えます。引き続き、振興支援策を進めていただくとともに、その詳細について、広く周知していただくことをお願いしたいと思います。

 次に、本市水産業ですが、東日本大震災福島第一原子力発電所の事故から10年たった今も、厳しい状況が続いています。震災後から、本年の3月まで、試験操業が続き、やっと現在、本格操業に向けた通常操業となっています。風評などの影響もあり、漁獲量は震災前までの状態には回復していません。この状況を少しでも早く上向きに変えていく施策を展開していくためには、あらためてしっかりとした現状把握が必要だと考えます。そこで、8つとして、震災後10年が経過した本市水産業の現況をどう捉えているのか伺います。

【答弁】農林水産部長 本市水産業の現況として、令和2年の水揚げ量で申しますと、沿岸漁業につきましては、979トン、震災前の18.6%、沖合漁業につきましては、7,908トン、震災前の53.2%にとどまっており、依然として厳しい状況が続いております。加えて、沿岸漁業につきましては、漁業者の高齢化に伴い、担い手不足が深刻な状況となっております。

 県によれば、県内では、震災に伴う津波で漁船が流されるなどで廃業した漁業者も少なくないとのことで、漁船数は震災前の2010年12月に1,207隻だったのに対し、2020年12月の調査では763隻と震災前の7割弱で、就業者数も2018年の漁業センサス調査では震災前の6割程度にとどまり、そのうち24歳以下は5%程度とのことです。そこで、このような状況の中、9つとして、本市水産業をどのように振興していくのか伺います。

【答弁】農林水産部長 本市ではこれまで、平成27年10月に地域ブランド常磐もの」を立ち上げ、本市水産物の安全性やおいしさ、品質といった魅力を発信する各種PR事業を展開してきたところであります。水産業の振興のためには、これまでの風評被害の取組みに加え、消費拡大に向けた取組みが重要であると考えており、「いわき市魚食の推進に関する条例」に基づき、魚食普及事業に取り組むとともに、国や県、水産関係団体等と連携し販路の拡大に努めてまいりたいと考えております。

 県内の水産業においては、現在の就業者数で本格操業に移行しても装備の発展等により、震災前の水揚げ量を確保するのは可能とのことですが、将来にわたって水産業を守っていくためには、後継者の育成を進めていかなくてはなりません。

 農林水産業のすべてに共通する喫緊の課題は、農林水産業で新たに就業を目指す人材の育成と新規就業者の生活が軌道に乗るまでの間、技術支援や安定した経営基盤づくりなどをしっかりと支える体制のさらなる強化だと考えます。そこで10として、稼げる農林水産業の主体となる後継者の育成についての考えを伺います。

【答弁】農林水産部長 今後の本市農林水産業の中心的な担い手となっていく後継者の育成につきましては、議員ご指摘の通り、農業・林業水産業の各分野で、喫緊の課題となっているところであります。農業分野においては、新規就農者の早期の経営確立・定着を促すため、今年度から「いわき地域就農支援センター」を設置し、就農相談を受けてから農業経営が軌道に乗るまで、伴走型による支援を行っているところであります。林業分野においては、現在、県が、林業従事者の育成を目的とした林業アカデミーふくしま」の令和4年度の開講に向けた準備を進めているところであり、今後とも国・県及び関係事業者等と連携しながら、アカデミー研修修了者などを中心に、担い手の育成及び確保に努めてまいりたいと考えております。水産業分野においては、就業希望者が漁業者に弟子入りして、漁業に関する知識や技術を学ぶ「おためし漁業体験」を、今年度から実施しているところであります。このように各分野で担い手確保の施策を推進し、本市農林水産業が持続可能な産業となるよう、努めてまいりたいと考えております。

 国・県そして農林水産業の関係団体としっかり連携しながら、一人でも多くの若者が、稼げる農林水産業の担い手として、さらには本市の農林水産業のリーダーとして活躍できるような、支援体制の早期構築をお願いして、次に移ります。

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3.観光産業の振興について 

 大きな質問の3番目は、「観光産業の振興について」です。

 観光庁は、令和3年版観光白書で、2020年の国内宿泊旅行の延べ人数は前年度から48.4パーセント減少し、日帰り旅行者の延べ人数も前年比51.8パーセント減少したと公表しています。新型コロナ感染症による影響が、観光業に大きな暗い影を落としたものであり、新型コロナ感染症は旅行の形態にも変化を及ぼしました。国内旅行では、県内等の近隣地域内(マイクロツーリズム)の割合が増加し、個人旅行の割合も増加したとのことです。

 そこで、(1)1点目は、「本市の観光産業振興に対する取組みについて」です。

 現在、新型コロナ感染症は沈静化の傾向を示していますが、年末年始に向かい、人の流れが活発化することが予想されます。新型コロナ感染症の再拡大、第6波に最大限の注意を払いながら、本市の観光戦略を前に進めていくための質問をしてまいります。まず1つとして、ポストコロナを見据えた本市観光戦略の柱はどのようなものか伺います。

【答弁】特定政策推進監 コロナ後を見据えた観光施策といたしましては、「遠方への旅行を控え、近隣域内で楽しむ観光」「三密が避けられる屋外体験」の増加などの需要の変化を踏まえ、旅行する方々の興味関心を引き付けるコンテンツを充実させるとともに、これをしっかりとターゲットとなる旅行者に伝え、「観光地として選ばれる」ことが重要であると考えております。そのための一つとして、自然、文化・歴史、スポーツ、食など、市内の様々な地域資源を、一定のテーマに応じた形でストーリー性を持たせて関連付け、本市の魅力をより深く体験・体感できるような観光メニューを、これまで以上に充実させてまいりたいと考えております。また二つとして、こうした観光のコンテンツが需要確保へとつなげられるよう、デジタルマーケティングやシティセールスの推進、地域と連携した情報の受発信や多様な媒体の活用など、効果的なプロモーションを行ってまいりたいと考えております。

 いわき市は、東京や仙台から電車で約2時間という交通利便性の高い地域であり、海・山・川などの豊かな自然環境や温泉そして名所・旧跡や歴史施設など、様々な観光資源を持つ地域です。

 平成22年、いわき観光まちづくりビューローを中心に、地域経済を牽引する戦略産業のひとつである観光産業を推進する目的で、観光と物産の振興に係る全市的計画「いわき市観光まちづくりビジョン」を策定し、平成30年度にその内容を改定いたしました。中には、3つの基本戦略として、いわきの魅力を多くの方に伝え、興味を持っていただくため、的確なマーケッティングで効果的な観光戦略に取組むことや、いわきならではのコンテンツや体験プログラムを造り、多様な旅行商品の造成に取組むこと、そして、いわき自慢の食や豊富な地域資源を活用し、おもてなしの心でリピーターとなっていただけるよう地域資源の積極的な活用に取組むことなどが掲げられています。そこで2つとして、本市観光産業の振興戦略の核となる、観光まちづくりビューローの組織強化に対する考えについて伺います。

【答弁】特定政策推進監 一般社団法人いわき観光まちづくりビューローは、観光地経営の視点から、事業者や商工団体、行政機関などと問題意識や戦略の方向性、事業の進捗状況などを共有し、地域の関係者間のマネジメントや各種データに基づくマーケティングを行うなど、コロナ後における観光再生においても極めて重要な役割を果たすことが求められています。そのため、ビューローにおいては、大手旅行代理店勤務経験者の採用や、金融機関経験者の登用、実務的な副会長職の人選など、その体制強化に取り組んできたほか、会長による若手職員を対象とした研修や、データマーケッティングに係るセミナーの実施、着地型の観光メニュー充実に向け、外部専門家による定期的な助言・指導の場を設けるなど会員や職員の資質向上にも努めてきたところです。市といたしましても、観光まちづくりの一翼を担う立場から、ビューローに市職員の派遣等を行うとともに、ビューローの活動に参画し、その体制強化と機能発揮を促進してまいります。

 本市は、「常磐もの」が獲れる豊かな海を持つ市として「魚食の推進に関する条例」を制定し、毎月7日を「魚食の日」としました。市長も、食文化をテーマにいわきの観光振興を進めたいと述べていることから、3つとして、食文化を通した本市独自の観光戦略とはどのようなものか伺います。

【答弁】特定政策推進監 本市では、多くの職の資源に恵まれ、カツオの刺身など、鮮度を生かした料理やサンマのポーポー焼き、アンコウのどぶ汁といった郷土料理など、地域ならではの食文化が古くから根差しておりました。こうした食文化の魅力を活用し、これまで、生産者と消費者をつなぐ旅行商品の造成や「常磐もの」を紹介するパンフレットの政策、農商工連携による新たな商品の開発などにより、観光誘客や物産品の販路拡大、風評被害に努めてまいりました。また、昨年、魚食文化振興のため、「市魚食の推進に関する条例」を制定し、地産地消の推奨や安全・良質な水産物の供給等により、魚食の推進を図ってまいりました。今後につきましても、本市でこそ味わえる食材や加工品、調理方法やその体験など、地域の食文化を活用した観光コンテンツの開発・充実に努めてまいりたいと考えております。

 さらに、世界遺産を登録するユネスコに「創造都市ネットワーク」という枠組みがあり、その中に食が含まれていることから、「創造都市ネットワーク」への応募にも言及していますが、4つとして、ユネスコ「創造都市ネットワーク」への参加に対する考えについて伺います。

【答弁】特定政策推進監 ユネスコの創造都市ネットワークの参加都市として、文学、映画、音楽、工芸、デザイン、メディアアート、食の7分野のいずれかにおいても、世界でも特色があると認定されることは、本市の魅力を広く発信でき、観光誘客の優位性を高めることが可能であると認識しております。また、認定都市間の連携等により、既存の地域資源の磨き上げや新たな魅力の創出、相互交流の促進などにつながり、本市の観光の幅を広げ、厚みを増すことも可能であると考えております。さらに本市では、ユネスコ「創造都市ネットワーク」と同様の趣旨で設置された国内組織である「創造都市ネットワーク日本」にも参加しているところであり、ユネスコの認定に向けた検討を進めてまいりたいと考えております。

 「創造都市ネットワーク」の認定を受けるためには、水産業だけではなく、飲食業界や旅館業界との連携が不可欠です。本市には、1,300年以上の歴史を持ついわき湯本温泉があります。「三箱の御湯」と呼ばれ、道後温泉有馬温泉と共に、日本の三古泉として知られています。常磐線常磐自動車道の開通によって首都圏などからの観光客で賑わい、さらに福島空港の開港や磐越自動車道の開通で、より一層交通の便が良くなり、湯本温泉には、多くの宿泊客が訪れていましたが、現在、東日本大震災の影響や新型コロナ感染症の拡大により、宿泊客の減少が著しいとのことです。そこで、ポストコロナを見据えた振興策について、5つとして 湯本温泉の観光再生に向けた取組みについて伺います。

【答弁】特定政策推進監 いわき湯本温泉は、入り込み客数が東日本大震災前の状況に至らない中で、コロナ禍に見舞われ、温泉観光地として極めて厳しい状況にあります。市といたしましては、これまで「旅館業等事業継続支援金」の給付のほか、温泉旅館に対する給湯料金の減免などを行い、その事業継続を支援するとともに、GO-TOトラベル事業に合わせた市民限定の宿泊費助成を行うなど、需要確保にも取り組んでまいりました。また、今週末にいわき湯本温泉で開催される将棋の竜王戦に合わせ、県の「県民割プラス」の利用促進に向けたPRを実施したほか、「県民割プラス」を利用する方々の本市の誘客や市内での消費拡大などにつながる施策の早期実施に向けた検討も進めているところであり、今後も湯本温泉を核としたさまざまな観光コンテンツの充実を図り、需要回復に努めてまいります。さらには、本年5月に策定いたしました「常磐地区市街地再生整備基本方針」の中で、「温泉」と「フラ」といった資源を生かしながら、賑わいと交流の源泉となるような交流空間の形成が位置付けられたところであり、今後は、これらの具現化を図ることで、湯本温泉のより一層の魅力向上につなげてまいりたいと考えております。

 観光産業の振興に、教育旅行の実施は欠かすことのできない要素だと考えます。教育旅行は、主に学校などで行われる旅行のことを意味し、代表的なものは修学旅行ですが、それ以外にも遠足や校外学習、キャンプなどの野外活動、新入生を対象にしたオリエンテーション合宿なども含まれます。県内では、新型コロナ感染に留意しながら、すでに実施している学校もあり、本市も教育旅行の目的地として、本市ならではのメニューを提供することで選んでいただける地域となることが大変重要です。そこで6つとして、教育旅行の拡大に向けた施策をどのように進めていくのか伺います。

【答弁】特定政策推進監 教育旅行は、団体での滞在時間が一定期間見込まれ、市内の周遊観光の促進も期待できるほか、訪れた児童・生徒たちが、家族とともにリピーターになるといった効果も期待できるため、その需要確保は極めて重要であると認識しております。そのため、震災復興やエネルギーなどのテーマに基づき、いわき震災伝承みらい館や市石炭・化石館、双葉郡の関連施設等に加え、デイクルーズで海から学ぶ体験も取り入れるなど、本市ならではの魅力的な周遊コースを造成し、パンフレットなどを活用した周知広報に取り組んでいるところであります。今後は、教育旅行のコースを学校等が選定する際、重要な役割を果たす旅行会社に対し、効果的なプロモーション活動を積極的に行うほか、実際に本市に訪れた学校や旅行会社に対し、内容の評価や要望等に関するアンケートなどを行い、その結果を、より一層の教育旅行の需要確保につなげてまいります。市といたしましては、こうした観光コンテンツの充実と、効果的なプロモーションを様々な取組みにおいても行いながら、コロナ禍で落ち込んだ観光の再生に向け、積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

 今回、内田市長の就任後、最初の質問にあたり、産業振興政策や農林水産業の振興政策、そして観光産業の振興について伺いました。そして、大変心強い言葉を聞くことができました。市長は、「いわき再起動」を標榜し、コロナ禍などで疲弊している「いわき」を思い、強い信念のもと、新たな視点を持って、自ら重責を担うことを選ばれたと思います。当然のことではありますが、様々な政策を進めていくことで最大の恩恵を受けるのは、市民の皆様でなければなりません。内田市長の知見や実行力をいかんなく発揮して、市政進展のために最大限に力を注いでいただくことをお願いして、

以上で、私の質問を終わらせていただきます。ご静聴ありがとうございました。