11月定例会最終日

12月13日 11月定例会最終日に思いがけず登壇する機会を得ました。
会派の皆様に感謝し責任を持って討論に臨もうと思いました。

決議案第1号「鮫川村青生野地区における焼却実験施設の建設工事の停止」を求める決議

この問題については提案理由説明がありその後、質疑・反対討論・賛成討論・採決という
流れがあります。私はその中の反対討論をすることになりました。

以下本文です。

いわき市議会 志道会 西山一美でございます。
 私は、決議案第1号 鮫川村青生野地区における焼却実験施設の建設工事の停止を求める決議について、反対の立場から意見を申し上げます。
 本案は、先ほどの提案理由説明にもありましたとおり、環境省鮫川村青生野地区に焼却実験施設を建設しようとしていることにつき、事業実施者である環境省から、本市をはじめ近隣自治体や住民への情報開示や説明が不足していることを理由に、いわき市の水道水源を守るため、工事のいったん停止を求めるものであります。
 本案には、本市市民の安全・安心の確保のために提案するものであるという基本的な方向性を見て取ることができ、私はその基本的な考え自体に反対するものではありません。
 しかしながら、決議案文の記述については、一部疑問を呈さざるを得ない箇所があり、賛同することができないため、反対の立場をとり、私の考えますところを申し述べさせていただきます。
 初めに、このたびの焼却実験施設の設置場所となった鮫川村の状況についてでありますが鮫川村では、稲作での収穫は一反歩あたり4〜5俵といわれ、浜通りでは8〜10俵といわれる収穫量と比較しても、非常に厳しい環境で主要産業は牛の蓄養となっております。
 しかしながら、原発事故の放射能の影響で、牛の飼料として使用できない牧草等が各畜産農家の敷地内にフレコンバッグに詰まったまま大量に保管されており、それを速やかに処分したうえ新たに安全な牧草を育てなければならないことが、喫緊の課題となっております。
 そのような困惑の中、環境省が呼びかけた焼却実証実験施設の提案は、その課題解決の具体的かつ有効な手法と考えられたことから慎重な検討がなされました。安全性や周辺環境への影響など様々な問題について、村長、行政、議会、各行政区長が話し合いを重ねた結果、国や県の除染計画を待っていては何時になるかわからず、自らが一歩踏み出さなければ速やかな解決に至らないと、苦渋の決断をくだしました。
 また、鮫川村はエゴマの良産地でありますが、その製品のエゴマ油について、「焼却施設を受け入れれば今後購入はしませんよ。」と顧客から厳しいご意見があり、そのほかにも様々な抗議があったと伺いました。それらを踏まえての決断ですから、非常に苦しい決断であったことが察せられます。
鮫川村村民が環境省の計画を受け入れた背景には、このような厳しい事情があったことをご紹介しておきたいと思います。
 また、過日、本市議会建設常任委員会鮫川村の現地視察により、各委員のご理解も得られたと思いますが、焼却施設のバグフィルターによる放射性物質除去率は99.9%とされておりここで使用するバグフィルターは、本市内の清掃センターで使用しているものと同等のもので、議員各位はその安全性については、すでに御認識があるものと考えます。
これらを踏まえ、決議案第1号の、内容において受け入れかねる箇所を挙げながら、討論を行います。
 まず、第1点目は、表題についてであります。
 表題中「〜建設工事の停止を求める決議」とありますが、あたかも不適当で危険な施設であることが明白であるので停止すべき、と取られかねないため、危険を及ぼすことを前提にしているもので、表題が不適切と考えられます。
 第2点目は、決議案本文中「実施主体の環境省によれば、8,000bq/kg超の農林業系副産物を焼却対象物として、〜」から「〜計600トンの焼却を見込んでいます。」との記述の部分であります。
 この表現によりますと、「600トンの焼却対象物すべてが8,000bq/kg超」と誤解を招く可能性があります。実際のところは、8,000bq/kg超の副産物は、600トンのうち約4.7%の28トンだけであります。
 第3点目は、決議案本文中「8,000bq/kg超の指定廃棄物は国が責任を持って処理することになっており、市町村で焼却、最終処分することは認められません。」とありますが、焼却を実施するのは環境省であり、最終処分ではなく、環境省が設置する中間貯蔵施設ができるまでの仮置きであります。
 第4点目は、決議案本文中、「安全確認と合意形成ができるまで、建設工事を停止すべき」とありますが、どの程度の安全確認が必要とされ、何を持って合意が形成されたと判断できるのか、認識の違いで、いつまでも停止状態が続く懸念があることであります。
 以上の点については、事実誤認があるのではないか、あるいは誤解を招く表現を含んでいると思われ、これらが決議案の全体に与える影響が看過できない程度のものであることから、反対するものであります。さらに付け加えますと、先に述べました鮫川村村民の方々の苦悩を考えると、近隣自治体とはいえ他の自治体が、建設の停止まで求めることは、やや行き過ぎの感を否めません。
 風評被害で苦しんでいる被災者や放射線に不安を抱いている方々が、いまだに大勢いらっしゃる中で、誤解を招きかねない表現や、誤認が疑われる記述を含む決議を本市議会が議決すべきではありません。市民の安全・安心のためを思ってのことが、表現の慎重さを欠いたばかりに、かえって市民の間に不安を引き起こし、一歩誤れば、これがまた風評被害の原因となり、風評を増長させることになりはしないかと危惧されます。危険が明白なものについて市民の注意を喚起することは、公共機関としての役割でありますが、また一方で、正しく怖がることが必要であると考えます。
 正しく怖がるためには正確で豊富な情報と知識が欠かせないものであって、そのためにも、情報の開示と誠意ある説明が求められるとの考えであれば、むしろ賛同するところでありますが、先ほどから申し述べましたとおり、本案の中に、一部賛同できない部分がありますため、本案には反対いたします。
 
議員各位におかれましては、深慮され、絶大なるご賛同を得られますことをお願い申し上げます。

 反対討論は以上です。
 

*写真は鮫川村の焼却実験施設敷地の視察した時のものです。